僕の猫が 下水に溶けて 二度と帰つてこなくなりました


あれは まだ純粋な暑さの 八月だつたでせうか
あれは 透明な汗の消えた 九月だつたでせうか


猫の嘘は 僕だけでなく 世界をも屈折させてゐる気もしました


これは 僕が稚拙だから 起こつた次第でせうか
これは 僕が阿呆だから 起こつた次第でせうか


僕の頭の中では 轡蟲が延々と 這い回つてゐるやうです


あれも 季節のせいでは なかつたやうだつたと
これも 未熟のせいでは なかつたやうだつたと


僕の猫が 下水に溶けて 二度と帰つてこなくなつてから


解かつたことだつたのです


僕の猫は 最後にひとつ 青鳴いて別れを告げた気もします